給料、支払われました。
心配してくださったみなさんありがとう。なんとか支払われた給与を握りしめ某社新年会に行く。
ビンゴでiPodをもらった。
この新年会で漫画家が豪華賞品を当てると、漫画家生命が絶たれる(笑)というぐらい呪われたビンゴである。壇上にはエルメスのバーキンや、マッサージチェア、ハイビジョンテレビなどが並んでいた。
相変わらず無駄に豪華だが、もっと以前は軽自動車や毛皮のコートなどもプレゼントされていたことがある。バブルの絶頂期を知る俺にとっては、これでも「しけた景品」。
そもそも謝恩会というのは、雑誌に関るデザイナーさんや印刷業者などを慰労するためのものであるので、俺たちみたいな漫画家に商品を配ってはいけないのである。
この雑誌の謝恩会に呼んでくれたのはかつての俺の担当W氏。
「今はH地方のある大学で漫画講師やってます」
そう言うと、
「大学の漫画学部……Mさん、って大学にいない?」
と聞いてきた。
「あの人、超ヤバイから、俺としてはキミがそこにいるのは感心しないなぁ」
W氏の話はこうであった。
M先生は、少年漫画出身だが、後に原作付きにシフト。というより、
大人気ドラマが先に存在し、そのドラマ脚本を元に、番外編や裏設定という形で漫画を描いていた、という方が正しいようだ。
M先生は、そのドラマそのものが自分の原作である、と言っていたし、俺もそう信じていたが、どうやら違うようだ。
口で吹聴するだけならまだしも、本来の原作者であるテレビ制作会社の許可無く漫画を描いて出版しようとして差し止められたり、勝手にその作品のイベントを開いたりして、業界では悪い方に有名な人物だという。
そのドラマの出演者と仲がよかったが、イベントのあとで俳優は自殺をしている。
噂では、M先生が妄想で
「あのドラマの続編が決定した」
と俳優にスケジュールを調整させたものの、撮影予定などまったくなかったことで、非常にショックを受けていたらしい。
M先生は、風俗やギャンブルにのめり込むタイプで、取材と称してカネを突っ込んで回収できなくなり、ヤクザに掠われたこともあったという。
そういえば……思い当たる節がある。
俺が四月に大学にはじめて来た日のことだ。一緒に新幹線の切符を買った時、財布の中にビラッと並んでいたのは……サラ金のカードだった。
VISAやダイナースなどの国際系は一枚もなかった。
俺はかつて営業の仕事もしていたからわかるのだが、本来隠しておくべきサラ金のカードを十数枚持っていて、なおかつ人目にさらしても平気なのは、日常的に返済と借り入れを繰り返している人間の特徴である。
こういう人間は多重債務者なので、まず金利の低いオートローンは通らないから、中古車屋が気にするポイントのひとつだ。
多重債務者ではないか、と思われる特徴として、電話での連絡がつかないことも上げられる。
実際M先生は、俺だけでなく大学からの電話にも一切出ず、固定電話は
「お客様のご都合によりおつなぎできなくなっております」
という、電話料金が支払えなかったときのアナウンスが繰り返されるばかりである。中古車店勤務の時、多重債務者に車を持って行かれたときの記憶がありありと蘇った。
まったくあのパターンである。
「着信履歴を残してくれれば、かならずコールバックする」とは言うが、いちどもかかってきたことはなかった。
M先生がたどり着いたのは、おそらく闇金といわれる多重債務者が陥る場所である。
担当が言うには、彼はそこである大物暴力団の幹部と繋がりができた。
その暴力団が多額の現金を貸し付けていた大学の学長を紹介され、今日に至る……のではないかと。
実際、Mは、漫画界では大物といわれる漫画家と接触し、彼を教授に迎える腹づもりでいるらしいが、この漫画家も同じく借金苦で首が回らない。
カネのない連中どうし。漫画家は自分の原画や資料などを大学に売り、大学はそれで資料館を造ると持ちかけたが、結局手付け金の数千万だけがヤクザに渡っただけだという。
「Mさんとお金のやりとりしたら、絶対返ってこないよ、有名だよ。業界内部でも鼻つまみ者だから、コネなんかないよ。そんな学校早く辞めた方がいい」
Wさんはそう言っていた。
「辞めても辞めなくても、あと数回の講義でさようならですから。俺、一年は頑張ってみようと思います」
「Mさんから仕事の話持ちかけられても、絶対に受けるなよ。学生にもそれ徹底させておけ」
この事実を学生が知ったらどうするだろう。
M先生の口車に乗って、就職をM先生の立ち上げたという会社に決めてしまった四年生もいる。会社なんて……闇金に金玉握られている漫画家に転がせるわけねーだろー……。
テーマ : 漫画家志望の日記 - ジャンル : アニメ・コミック